翼が折れても……



今は、カモミールモールから、龍ちゃんの病院まで戻る道のり。

「優羽が言ってたんだ。
紗羽がスランプにはまったかもって。
……大丈夫か?」

「うん、大丈夫、だよ。」

……自信は無い。もしかしたらこのまま出来ないかもしれない。

それでも、強がっていた。

「……紗羽さ、スランプに入ってから、練習量増やしただろ?
そんなことしたら、気持ちが自分を追い詰めるだけだ。」

「わかってる。けど……。」

「紗羽、じっとしてられねぇんだろ?」

「……うん。体を休めなきゃいけないのは、わかってる。
けど、出来ないんだよ。
どうしても休むと、不安になってくる。
体を休めようとしても、心が休まらなくて……。」

「今日は、不安になった?」

「え……?ならなかった。」

まさか……?

「そっか、良かった。」

龍ちゃんは、静かに笑った。

今日、龍ちゃんが遊びに行こうと私を誘ったのは、私の為だったんだ。

焦る私を落ち着かせるため。

「……ありがとう、龍ちゃん。」

私は、勝つよ。……君のために。

そう、夕日に誓ったーーー。