ーーー

初夏になり、曲も無事決まり、今は振り付け最中。

今シーズンは、ショートプログラムはいつも通り元バレリーナの先生に振り付けしてもらう。

今回のショートプログラムのテーマは、癒し。

妖精のイメージだ。

そして、フリースケーティングは人を勇気づける。

明るくさせる曲。今までやったことが無いアップテンポの曲。

その振り付けをしてくれるのは、高瀬さんだ。

優羽の方は、順調に振り付けが出来ているらしい。

……だけど私は、フリーの振り付けが上手くいってない。

今までにないくらいステップが難しくて、ステップが出来なくて、焦ってジャンプも失敗する。

……初めて経験した、スランプだった。

「ふぅー。」

本当は、今日は休みだ。でも、不安で仕方なくて、いてもたってもいられなかった。

「……ここのステップが上手くいかないんだよな。」

高瀬さんがやってみせたようにやりたいのに……。

「紗羽ちゃん。今日は、休みじゃなかったっけ?」

「あ、高瀬さん。」

「……不安?」

「はい……。こんな事初めてで、どうしたらいいのか分からなくて。」

「スランプ、経験したこと無かったのか。」

「……今まで本気でスケートに挑んで来なかったから。」

「てことは、今は本気なんだね。だから、もっと辛いのか。」

「はい。」

「練習も必要だけど、リフレッシュも必要だ。特に、スランプの時は。」

「はい……。」

「よし!じゃあ、今日は練習にして明日、休みにしよう!!」

その一言で、練習を開始した。