ーーー優羽side
久しぶりにに龍に会いに来た。
龍が事故に遭ってから、3ヶ月以上経っていた。
コンコンコン
震える手でノックした。
「はい、どうぞー。」
ガラガラガラ
「……久しぶり。」
「……優羽。」
久しぶりに聞いた龍の声は、落ち着いたものだった。
「久しぶり。元気だった?」
「うん……。ごめん、今まで来れなくて。」
「ううん、いいよ。辛かったんだろ?」
「……うん。」
龍は、優しいなぁ……。
「紗羽が俺に言ったんだ、"ごめん"って。……俺、その時気づいたんだ。
今までも優羽が誰かと喧嘩したり、怒られても謝らなかったりするとさ、必ず紗羽が謝るんだ。」
「え……?」
それは、いつものことでしょ?
「それは、いつもの事だって思ってるんだ。優羽だってそう思ってるんだろ?
でも、それは普通じゃないんだよな。
俺には、できない事だ。」
確かに。自分が怒られてもないのに人に謝るなんてできない。
「俺、事故に遭って紗羽の本当の優しさがわかった。」
「本当の優しさ?」
「俺、紗羽に殺してって言ったんだ。」
「え……?」
龍がそんなこと言うはずない……。
「そうしたら紗羽、俺が求めてる優しさがそういう優しさなら、私は優しくないって。……普通、そんな事言われたら、その人に会うの怖くなるよな?
でも、紗羽は、毎日ここに来て、笑ってくれた。」
紗羽……。
「俺、強くなりたい。紗羽みたいに。」
「うん、一緒に強くなろうよ。」
「違う。
きっと誰かと一緒にいたら俺、甘える。
これから、1人で頑張っていく。
……だから、別れてほしい。」
「え……?」
……別れ、る?
「ごめん。」
あぁ、こういう気持ちだったのかな?紗羽は。
きっと龍は、私のこと好きじゃなくなったんだ。……きっと紗羽を。
「うん、わかった。でも、最後に嘘はやめてよ。」
「っ……。嘘じゃない、けどもう一つ理由がある。」
「うん。」
「俺、分からなくなった。
小さい頃から、優羽を憧れてたんだ。
いつも優羽は、俺の前を走っているようで。なんとかして、優羽に追いつきたいって必死だった。
……でも、俺は優羽に追いつけなくなった。そうしたら、優羽が見えなくなった。
そんな時、紗羽は、俺の隣で俺を引っ張ってくれた。
……紗羽の強さが眩しかった。」
紗羽……。
「そうだよね、本当は紗羽の方が強い。」
「俺、もしかしたらずっと優羽の事憧れてたんじゃないかって思ったんだ。
……恋じゃなかったのかもしれないって。」
「紗羽は、憧れなの?」
「わからない。
だから、もっと強くなって紗羽並びたいんだ。
そうしたら憧れなのかわかる気がするから。」
龍……。それは、きっと憧れじゃないよ。早く、気づいてあげて。
「ふーん、そんなことしてる間に誰かが奪っちゃうかもよ?」
「それは……嫌だな。」
龍と紗羽が、幸せになれますように……。
ーーー優羽side終