翼が折れても……


ーーー

「ただいま。」

「紗羽!!」

おかえりではなく、お父さんの怒鳴り声が返ってきた。

……きっと優羽がさっきの事を話したんだろう。

「お前、優羽になんて事をしたんだ!!なんか言ったらどうだ!!」

「……ごめんなさい。」

いつもそうだ。お父さんは、優羽ばっかり。

運動会でビデオを撮ると、映っているのは優羽だけ。

「あなた、落ち着いて。紗羽の話も聞かなくちゃ。」

「話なんか聞くか!!何があろうと人を叩いていいわけがない!!」

「じゃあ、聞かなくて結構です!私が紗羽の話を聞きますから!!」

お母さん……。

お母さんは、優しかった。運動会で優羽しか撮らないお父さんに対して、お母さんは
『じゃあ、私は紗羽を撮ろうかしら。』て言ってビデオカメラを買った。

そんなお母さんが大好き。

「っ!!わかった。お前の好きにしろ!!」

バタン!!