か....可愛い?私が?周りからは「咲兄」とか言われるそんな私が?異性からそんな言葉初めて聞いて驚いた。普通に聞き流せばいいのに何故かそのワードが頭に残る。別にくちゃ男に惚れたとかそんなんじゃない。むしろ嫌いだ。だが何でたった一言で私はこんなに頭が混乱しなきゃいけないの?
私の中では疑問だらけだった。



「まぁまぁ二人ともやめろよ。初対面なのにこんなん良くねぇぜ。」


ガンを飛ばしあっている二人の間に辰吾が入った。


「そうよ。こんなことで争っても意味無いわ。取り敢えず自己紹介がまだだったわね。私は 山本 紀栄。この子は遠藤 咲ちゃんで、この子は相川 秀哉君。 そして神崎 辰吾君。 私達は教師と学生の関係でここへ来たの。貴方達は?」


おばちゃんは必死に話題を変えて、重要な部分は嘘をついた。まぁそれは正しい判断だ。「実の娘が旅館に引きこもってるの」なんて言えば周りから怪しまれるし、余計状況が悪化する。
相変わらずくちゃ男はヘラっとしていて、もう一人の方はおばちゃんをじっと見つめていた。


「物分かりがいいじゃん。そうだよ、俺はただ質問しただけなんだよな。俺は 新堂 真樹。「首無しトンネル」に行ってきたんだけど何も収穫なくてな。んで、近くに旅館っぽいのがありそうだから来たんだよ。こいつはトンネルの出口辺りであってな。たまたま行先が一緒だから来たんだ。そう言えばお前名前なに?」


「....省吾です....」