「お風呂のお着替えの浴衣を持ってきました。着なくてもいいのですが、宜しければと思いまして。」


別にいいのに...
でも旅館にいる内は浴衣でもいっか。
私はこの寒さに耐えれるように厚着だった。
だが外は寒いが旅館は暖房が効いているし、正直このままじゃ暑くてたまらない。


「ありがとうございます。そこに置いといて下さい」


そう言うと実里さんは畳んである浴衣を引き出しの前に置いてくれた、


「あと実里さん。一つ質問があります。あの庭にいる大量の犬は何ですか?」


そう聞くと実里さんは近くの壁を触り始めた。
和室を見渡すと壁にも何箇所かデコボコがあった。
デコボコを触って今いる場所を再確認したと思ったら立ち上がり、私の方へ向かってきた。
私の右隣に実里さんが並び、右手の方に指をさした。


「あそこの木の壁分かります?あそこは温泉です。この人気のない旅館。温泉は中のほうもありますが全部中だとこの旅館の良さ、歴史や自然を感じることが出来ません。なので覗きと泥棒対策として飼っています。」


あれは温泉だったのか。
この季節での温泉は最高だろうな。
実里さんは淡々と説明する