秀哉の願い。普段なら絶対に反対していたお願いも今では喜んで引き受けていた。咲は最後の力を振り絞り、喉に突き刺さっているナイフを更に奥へと入れていく。血が更に出てきて私の服破けた服と肌を赤く染めていく。
好きな人を殺してしまった。だが、今は逆に嬉しくて仕方がなかった。

私は今まで誰一人として助けてあげられなかった。救ってあげられなかった。だけど、私の好きな人は殺されることを願った。それを叶えさせてあげたことによって、秀哉は救われたのだ。

私はようやく、死ぬ直前になって人を救うことが出来たのだ。
そして、私は愛する人と死ぬことが出来るのだ。


秀哉の呼吸が小さくなっていくと私の意識が薄れていく。まるで共同体のような見事なシンクロだった。心さえ繋がっていないのは分かっていたが、こんな些細な事でも"同じ"という事だけで嬉しかった。



そして、自分の意識が無くなった時

愛する人の呼吸も止まった。