首取り


...それに私はもうこんな有様。ここから逃げ出しても生きれるかどうか...
ここから出る前に灯油に火をつけてこの旅館を燃やして?ここの人達も解放されたいだろうし、私はこの風華と一緒に死にたい。」


おばちゃんはすぐ下に置いてある風華の瓶に目線をやった。私の胸の中でチクリとした。


「秀哉君。死にたいんならここへまた戻ってきてそれから死になさい。咲ちゃんをちゃんと家に送ってからね。それに、私はここで助かっても自殺するわ。夫を失い、最愛の子も失った私に残っているものはないし、その上で生きるのなら私は死んだ方がマシよ。」


「で、ですが」


「秀哉君!!...それじゃあ話がまとまらないんじゃないの?...早く行って。お願い。実里ちゃんの力が段々強まってる。
...咲ちゃんを頼んだわよ。そして咲ちゃん。今までありがとね?」


おばちゃんの言葉を聞いている内に私は自然と涙を零しているのに気付いた。秀哉も涙を目に浮かべていた。おばちゃんの笑顔は私の胸に深く突き刺さる。だが、分かってる。ここでウダウダしていても実里の力が強まるだけ。おばちゃんの意志を無駄にするだけではなく、ほぼ全滅だ。

私と秀哉はおばちゃんの意志を尊重し、言葉を交わすこともなく静かに階段を登った。


地下の外へ出るとそこには灯油が撒き散らかしてあった。受け付け室だけではなく、受け付け室の前の廊下くらいはやたらに撒き散らしている。