首取り

あんだけ好き好き言ってた私に目もくれず部屋を出ていった辰吾に何故か安心感があった。今は辰吾と目があったら息が詰まる。
それに辰吾が足音をガンガン鳴らしてくれたお陰で音をたてていない私達は完全にスルーなはずだ。

だが私の予想は大いに外れていた。愛梨はその場から離れようとしなかった。辰吾を追いかけずに耳を済ましていた。


「...フフフ。聞こえる...息が荒いね。何かあったの?言い争ってたみたいだけど?アハハハハ。」


愛梨は私の息を聞きつけてしまっていた。慌てて口を塞ぐがもう遅い。愛梨の標準は私になっていた。愛梨が私の方へ飛びかかろうとした瞬間。秀哉が私の前に出た。


「待ってくれ!殺さないでくれ!頼む。話がしたいんだ。」


秀哉の声を聞いた愛梨は一瞬顔を顰め、目をぴくぴくと痙攣させていた。


「その声...実里に痛いことさせた奴だね。そんな奴と話すことはないよ?」


「やっぱり....お前は実里なのか?...」


「?何いってるの?そうに決まってるじゃん。怖すぎでおかしくなったんじゃない?」


愛梨の姿を被った実里は首を傾げながら不思議そうに言ってくる。秀哉のお陰で今の内は実里と喋ることになり、襲われる可能性はなくなった。


「実里。何でこんなことするの?私達が何をしたっていうの?」


私の問いに対して実里は急に高笑いをし始めた。まるで壊れた喋る玩具のように不気味にケタケタと笑っている。その異様な反応に私は鳥肌がたった。