首取り

だが、飛びかかる直前に愛梨が信二さんの胸に拳を叩き込んだ。信二さんは血反吐を吐きながら壁に叩きつけられ、息を荒くしながら倒れ込んだ。
そんな信二さんの首根っこを掴んだ愛梨は片手でペタペタと信二さんの顔を触って、耳を澄ましたりした。


「....!あんたか...実里を刺したのはあんたか!!すんごい痛かったんだからね!実里に謝ってよ!!」


そう言いながら愛梨は信二さんを床へ叩きつけ、馬乗りした後に信二さんの顔を殴った。
その一発で既に肉が潰れる音がして、信二さんは殴られた反動で身体が少し浮いたのを最後に、もうピクリとも動かない。即死だ。
信二さんが死んでも愛梨の怒りは収まらず、グチャグチャになった信二さんの顔を何度も何度も殴った。その度に背筋がゾッとする音が響き渡る。

私は豹変した愛梨の姿を見ることしか出来なかった。頭の中が真っ白で自分が今何をするべきなのかすら見失っていた。


「咲!逃げるぞ!早く走れ!」


後ろから秀哉の声がしてハッとする。振り向くとおばちゃんと秀哉が走ってこの場から逃げようとしている姿があった。私はあやつり人形と言わんばかり、混乱状態になりながらも二人の背中を追いかけた。

愛梨は秀哉の声に一切反応をよこしていない。信二さんに制裁するのに精一杯のようだった。