「はぁ〜...やっぱり正面から入るしか他ないか...」


正面からせいぜい堂々といくのは抵抗があるが、恵実の部屋は結局何処にあるのか知らないしそれしかないのか...
とにかく入らないと進まない。
この中に恵実が、そしてあの女の人...
絶対に助けてみせる!

深く深呼吸をして私は旅館の中に足を踏み込んだ。

玄関の引き戸を開けて中に入った。
きっと玄関で襲われると思い、ポケットの中でバタフライナイフを握りしめている。
だがそんなことは無く、普通の良い旅館の玄関だ。
中はピカピカで綺麗だ。
そして歴史という雰囲気が出ている。
こんな状況じゃなかったらとてもテンションが上がっていたことだろう。

目の前には受け付け場所があるが誰も座っていない。
代わりに受け付けの紙とペンとベルが用意してあった。
靴をスリッパに履き替えて受け付けの方へ向かい受け付けの紙に記入していった。

本来なら恵実に招かれたということで部屋に直接行きたいのだが、恵実が襲われたのに見た感じ旅館は何も変化がない。
ということは部屋に女の人が篭っている可能性がある。
なので慎重にそして正確に助け出す為に私は一人で泊まるということにした。

記入し終わりベルを一回ならす。

チーン...

鳴らしたが誰もくる様子がない
もう一回くらい鳴らしてみようか...