首取り


「別にいいわ。あんなバケモノ、賭けでも殺せるレベルまでこれたら上出来よ。」


その言葉だけ言い残して私は慎重に戸を開く。廊下は相変わらず静寂に包まれていて、水を少しでも垂らせばその音が旅館全域を包み込んでしまいそうな感じにも思える。
今から向かうのはT字路だ。
包丁を後ろポケットにしまって、ホースは蘭に持たせていた。

頭だけを戸から出して左右を確認すると、そこには返り血を浴びていた幸江さんが右手の方へいて、目があってしまった。


「あっ...」


自分でも思う程情けない声が出て、一瞬時が止まったように思えた。幸江さんはそんな私を見て、目を見開いて驚いていたものの拳銃を私の方へ向けていた。
私は反射的に顔を引っ込めようとするが、幸江さんの方が早く、引き金を容赦なく引いて私に発砲した。爆音と光で一瞬怯んでしまって私の動きがその時だけ停止してしまった。まさか銃の音はこれ程大きい音とは知らなかったので完璧に怯んでしまった。
だが、引き金を引かれる前に少しでも頭を動かしたのが幸いで、銃弾は私の頬をカスって壁にめり込んだ。

私はそのまま倒れるように後ろへ下がって秀哉の身体に体当たりをしてしまった。
秀哉は「うっ!」と声を漏らしながらも何とか私の身体をキャッチしてくれた。