この先は山道だ。
これから森林があり、更に暗くなっている。
さっきの寺での出来事が頭に浮かんでくる。
また枝が折れる音がしたら私は今度こそ発狂する自信があったので一瞬行くのを戸惑ってしまった。
まぁここ以外に旅館につく方法はないので仕方なくその山道を進んだ。

フクロウがよく鳴る。
いかにも夜って感じ。
動物は好きなのでフクロウの鳴き声を聞いていると落ち着ける。

...だけど物音は出さないでよ...

聞こえるはずもない心の中で森の中にいる生き物に忠告した。
寺の方はやっぱり寺があったので結構ビクビクしていたが、トンネルのこともあり、少し通常より暗いが、寺などないただの山道だったのであんまり怖くはなかった。

だがその気持ちもすぐ吹っ飛んでしまった。
左の草むらから異様な程の視線を感じてしまっているのだった。
その視線はただ見ているとか殺気を出しているわけではない。だがその視線はとてつもなく嫌で気持ち悪くなるものだった。

まさか...あの女の人...?

本当にあの女の人だったら今すぐにも叩き倒して恵実の居場所を吐かせようと思うが、場所が場所だ。
暗いしこの場所何て来たことない。分が悪いと思い私は逃げるようにこの森を走った。だが、走ってすぐその視線は感じなくなった。

あの女の人じゃなかったのかな...?また動物かなにかか...
深く考えていてもそんなこと分からないし私は気にせずに歩き出した。

そんな山道を歩き続けて10分。
森林を抜けたら

とうとう目的地の「彩澄旅館」が見えた。