上手く行き過ぎて逆に怖くなるほど、周りは静かで人の気配すら感じないまま『調理場』まで足を運べた。後ろを振り返るが誰一人欠けていないことにホッと胸をなで下ろす。
全く....秀哉がいきなり実里ちゃんを連れて行った時にはどうしたものかと思ったが、何とか辰吾以外のメンバーは大丈夫だった。
まだ脱出の手口や、風華と恵美の手掛かりを掴んでいないものの、この中で誰かが消えていくということは何故か考えられなく、全員無事に帰るビジョンが頭の中でよぎるばかりだった。

先頭にいた秀哉がゆっくりと調理場の戸を開け、無事なのを確認した後私達にハンドサインを送りゾロゾロと中に入っていく。愛梨は用心深く、調理場に入った後入った所を見られたかどうか確認してからゆっくりと閉めた。
調理場はとても客が大勢来た時に対応仕切れない程の大きさで、普通の家にあるキッチンより少し大きいくらいしかなかった。だが、結構清潔感に溢れていて、食器もピカピカ。新品みたいだった。
周りには白いボツボツした壁が貼られていたが、この穴の中から槍が出てくるとかいう仕掛けでは無さそうなので少し一安心。
おばちゃんが蛇口から水を出すが、何の問題もない。普通の水だった。これでもし、露天風呂みたいな臭い匂いの水だったらどうしようかと思ったが、何とかこれで臭いは落とせるみたいだ。