緊迫とした時間が終わった事を実感させてくれた時、私の頭の中には疑問の声が飛び交っていたが視線は哀れな姿と化した美津ちゃんと惠津子さんの死体から動くことは無かった。
二人共生きている感じもしないし、ピクリともしない。そんな時が止まったような二人の空間に何か変化してるというと、二人の血が床を染め続けていることくらいだった。
後ろで何か物音が聞こえてくることに気付くのはそう遅くはなく、振り向こうとするが何故か視線があの二人をターゲットにして離さなかった。


「おい咲!しっかりしろ!....早く部屋の中に入るぞ!....」


秀哉が肩を大きく左右に振ってくれたお陰で私の視界は二人から、緊迫とした顔をして周りを警戒している秀哉へとようやく変わることが出来た。
私は秀哉と近くに駆け寄ってくれた辰吾の肩を借りながらも、ヨタヨタと歩きながら部屋の中へ入れた。

部屋には既におばちゃんが正座で座っていて、手が震えているのが見えた。辰吾も顔が真っ青でガチガチと口が震えていた。秀哉に至っては周りを気にしているようだが、動揺はないことはないが、それ程といった感じだった。私は二人にお礼を言い、ようやく一人で立つことが出来た。
そして初めて口を開いたのは辰吾だった。