首取り

身体は硬直し、汗が吹き出し、ただただその光景に圧倒されていた。
ちらりと美津の方も見るが自分と全く一緒だった。さっきまで明るかった笑顔は完璧に消えていて金魚みたいに口をパクパクさせ、目が見開いていた。

美津に話しかけられた実里と女将はビクッと身体を少し震わしてゆっくりとこちらを振り向いた時に実里の脇の隙間からハッキリと赤黒い液体がかかっている何の肉か分からないが、肉塊が皿に盛り付けてあった。その肉魂にはハエがたかっていて、辺りは生臭く、気持ち悪い臭いで覆い尽くされていた。

そしてその皿から実里の方へ視線を向けると、皿に盛ってあった肉塊の正体が明らかになった。
実里の右手には食べかけの青白い肉の棒を持っており、口からは人の指が飛び出ていた。ラーメンの麺を啜るように指を口の中に完璧にしまい込み、グチャグチャと心底気持ち悪い咀嚼音を鳴らせると実里は黒が一切ない白目を剥き出しにしてこちらを見てきた。
幸江さんはおでこに汗を流しながらこちらを睨んでいた。まるで獲物を目の前にしたライオンのように鋭い眼光を放っていた。

この時生物としての本能が『危険だ!逃げろ!』と脳に呼びかけているような感じがし、あっけに囚われている美津の腕を強引にとり地獄の食卓を脱出した。

走りながらさっきの状況を必死に理解しようとするも、頭がグルグルと混乱していて逃げることしか考えられなかった。