「やめて...もうやめてええええ!」


私はその光景を見ること聞くことに我慢出来ずに耳を塞ぎ顔を逸らす。

恐怖を感じる。
今まで数多くの怖い話を聞いてきた。だがその時の恐怖とは全くの別物、これが本来の恐怖というものかと実感した。

耳を塞いでも少し聞こえるその音が次第になきやんだ。電話越しの音声は静寂に包まれていて、さっきまでの事が無かったようにも錯覚させられた。


「え...み...?」


私は恐る恐る画面をみた。

そこには血で赤く染まった窓を舐める人がいた。
それはあの女の人。
返り血で全身血だらけで楽しそう笑いながら窓を舐める。その血が白い歯にこびり付いて段々と赤い歯へと化していく。


「ひっ!」


なんなのこいつは!!
恵実に何をしたの!

心ではそう思うが声が出ない。
ただ画面を見ることしか出来なかった。


この状況をどうしたらいいのか、何を発していいのか分からなく、そのまま通話は突然切れた。