私達は実里ちゃんの後ろで邪魔にならないよう少し距離を置いて歩いていた。実里ちゃんは普通に目が見える人のように何の迷いもなく足を進めていて、驚きを隠せなかった。目が見えない。そこには光なんてない、言わば真っ暗の洞窟を明かりなしで探検するような感じなのだが、実里ちゃんは歩きながら何と話しかけてきた。



「あともう少しになりますので、ご辛抱の方を宜しくお願いします。」


「あら。そうなの?実里ちゃんは偉いわね。言葉使いもしっかり出来てるし、お母さんの手伝いが出来るなんて」


「いえいえ。そんな大層なことは出来てませんよ。」


「いやそんなことないぜ。実里ちゃんはよくやってるぜ!」


「そう言っていただけると有難いです。」



おばちゃんと辰吾も絶賛で評価していたが、実里ちゃんはしれっと受け流す感じに言った。多分この絶賛の声はそう少なくないのだろう。


「実里ちゃんは何歳なんだ?俺らより少し下くらいだと思うんだけど」



「年齢は....秘密です....」


実里ちゃんは少し恥ずかしそうに言った。秀哉の声だけでイケメンと察したのか?っと心の中で軽い冗談を吐く。



それから少し少しだが場が和んで皆会話が弾んでいる状態だが、私は少なくとも警戒心は解いていなかった。