晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

てっきり、リョータが好きな本を教えてくれるんだと思ってた。

もちろん、あれもリョータの好きな本なんだろうと思う。でも、それだけじゃなくて、私のことを思って私の好みを考えて選んでくれたもの。

そのことが、内容から伝わってきたから──


「次ー!」


美羽と並び、クラウチングスタートの姿勢を取る。

白線の遥か先で、トモちゃんが高々と手を挙げた。

ホイッスルの音が響いて、刹那、力いっぱい土を蹴り上げた。


“限界まで走ったら、何かが変わる気がしない?”

“ゆっくりでいい。足を止めるな。前に進め”

“君の風が、きっと誰かの希望になる”


読んだ本のフレーズが、景色と共に後ろへと流れていく。

走れ。振り返らずに、ただ前へ。