晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

2礼2拍手1礼。これが一般的な作法だけど、島根県にある出雲大社は2礼4拍手1礼が基本なんだって。いつか行ってみたいなぁ。


「ちづ、行くぞ。後が閊(つか)えてる」


康介の声にハッとして、もう一度頭を下げてから体を翻した。

小走りで隣に並んだ私の顔を、康介が不思議そうに覗き込んでくる。


「随分真剣にお願いしてたみたいだけど、何を願ったんだ?」


康介の無垢な瞳が聞いた。気づかれないように、視線を僅かに逸らす。


「……内緒」

「何だよそれ、勿体ぶってないで教えろよ」

「やだよ。私、言霊って結構信じてるんだから」


康介が眉根を寄せたのは、私の返答に不満があったからか、それとも言霊という言葉をそもそも理解できなかったからか。うーん、どっちの可能性もあるなぁ。


鳥居をくぐって、境内に向かって礼。

何かの合図を交わすでもなく、ランニングが再開される。