晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

「戻るわ」

「ん」


ひらりと体を返して、真田が自席に戻っていく。

その後ろ姿をぼんやりと眺めていると、教室の扉が勢いよく開かれた。


「みんな座れー! お待ちかねのテスト返しだぞー!」

「誰も待ってねーよ!」


元気な声と共に姿を見せたのは、数学教師の佐藤達海(サトウタツミ)先生。

分かり易い授業に加えて25歳と若く、生徒からは“サトタツ”って愛称で親しまれてる。

細身のスーツがパシッとキマる長身で、おまけに顔もそこそこかっこいいから、憧れてる女の子も多い。

っていうのは、去年、同じクラスだった女の子達がキャーキャー騒いでいたから知った。


「サトタツ、今回のテストいつもより難しくしただろ!」

「バーカ、いつもより簡単だったろーが。平均点も前より上がってたぞ」


最前列の男子生徒と言葉を交わしながら、サトタツが教壇の前に立つ。