からからと喉を鳴らす康介の表情に、陰りなどない。


「覚えてる? 小学校の時、試合当日に熱出したこと」

「あったなぁ。フラフラなのに出て、試合中にぶっ倒れたんだっけ、俺」

「そうそう。体温計ったら39℃もあったから、みんなびっくりしたんだよ」


保育所で作った泥団子を康介が誤って食べそうになったこと。

小学生の頃、体育の時間に私が六段の跳び箱に突っ込んで、両膝に大きな痣が出来たこと。

中学の時に、ちょっとしたことで口論になった場所が図書室で、図書委員だったクラスメートに追い出されたこと。


マンションに到着するまでの間、遠い昔のような、つい最近の出来事のような記憶の引き出しを開けては口にして、ふたり揃って懐かしんだ。