晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

リョータがその向こうに消えた扉の前に設置された椅子に腰掛けていると、リョータのお母さんが血相を変えて現れた。

あぁ、怒られちゃうな。どこか他人事のように考えていた私を待っていたのは、叱責ではなく抱擁だった。

事態を把握出来ないでいる私の耳元でリョータのお母さんのすすり泣く声が聞こえ、これが現実であることを理解したんだ。




集中治療室に居場所を移したリョータには親族のみが面会可能で、詳しいことはよくわからないけれど、人工呼吸器でようやく呼吸を繋いでいる状況で、一向に目を覚ます様子はないらしい。

時は無情にも流れ続け、全国大会の会場へと出発する前日。リョータのお母さんに呼び出され、練習終わりに病院を訪れた。


「これ、よかったら貰ってくれないかしら。無理にとは言わないけど」


デイルームで向かい合い、差し出されたのは大きな紙袋。

恐る恐る中を覗き込むと、中身は大量の書籍だった。


「どうして、私に……」

「あの子が大切にしていた本だから、同じ趣味を共有したあなたが持っていてくれると嬉しいなって」