晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

勇気を出して伸ばした手は、虚しく空を切った。

届かない。リョータはもっと先にいて、今この瞬間に翼を広げようとしているのだ。


「ありがとう、登坂さん」


朝日を背にして、リョータがこちらを振り返る。

光に目が眩んで、彼がどんな表情で私を見ているのかわからない。


「最後に君に出会えてよかった」


優しい声で紡がれた言葉は、少しの振動と共に耳に届いた。

嫌だ、最後だなんて言わないで。私の懇願を待つことなく、残酷な言葉を言い置いてリョータは地面を蹴った。


さっきまでの覚束ない足取りが嘘みたいに。まるで数年のブランクなんてなかったかのように。学校のグランドが、大きな競技場のフィールドに思えるくらいに。

彼は駆けた。翔んだ。

その身に残された全てを懸けて風になって、それから──


「リョータ……ッ!」


舞い戻ることを望み続けたその場所に、崩れ落ちた。




それからのことは、よく覚えていない。

自分が人を呼んできたのか、誰かが人を呼んでくれたのか。

すぐに病院に運び込むことが出来たのか、それとも時間が経ってからだったのか。

何一つ覚えていないけど、意識を失ったリョータは病院に運び込まれた。