晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

声が震える。でも、決意は揺れない。

まだ引き返せることはわかってるけど、引き返すのに必要な理性はとっくに棄てた。


「行こう、リョータ。もう一度、走ろう」


常識から足を踏み外した台詞を口にしながら、手を差し出す。

リョータは心底嬉しそうに笑って、迷うことなく手のひらを私と重ねた。




病衣だとさすがに見つかりそうなので、入院着として使っているジャージに着替えてもらってから病室を出た。

足取りが覚束ないリョータに肩を貸しつつ、誰にも見つからないように慎重に歩みを進める。

ナースステーションの前をクリアし、エレベーターに乗り込んでまず一安心。

それから、守衛さんの目を掻い潜って、リョータの言う脱獄は成功した。


「こっち」


正門はまだ開いていないので、裏口に回って校内に入る。


「侵入成功」

「だね」


不安を振り切るようにふざけて笑ってみせると、リョータも同じテンポで返してくれた。

間違ってないよって言われているようで、ちょっとだけ安堵する。