晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

その笑みの意味に気付いてしまいそうになって、私は慌てて頭を振った。


「早く読んでちゃんと返す。感想と一緒に持ってくる。だから、リョータの物はちゃんと……自分で持ってて」 


私がよっぽど傷ついた顔をしたのか、リョータは少し困ったような顔。

二人の間に流れる微妙な空気が、妙に苦しかった。




7月も下旬になり、遂に夏休みに突入した。

バカンスだバケーションだと心を躍らせる生徒や勝負の夏だと意気込む受験生とも違い、部活生は相変わらず練習に明け暮れる。

例に漏れず全国大会を控えた私もそのうちの1人だが、隙間時間を見つけてはリョータの元を訪れている。


「今日も、まだ練習あるの?」

「うん。いつもとんぼ返りでごめんね」

「ううん。俺は……来てくれるだけで、嬉しいから」


リクライニング式のベッドを起こし、そこに完全に体重を預けた状態のリョータ。

言葉を交わしながら使い慣れたパイプ椅子を広げた私が身に纏っているのは、相も変わらずクラブジャージだ。


「そういえば、聞いて。昨日ね、自己ベストに迫るタイム出せたんだよ」

「ほんと? すごい、さすがだね」

「このまま自己ベスト塗り替えられたらいいんだけど、中々うまくいかないよね」


ペラペラ喋る私の話を、リョータはニコニコ笑顔で聞いてくれる。体調の良し悪しがリョータの口から伝えられることはないけれど、どうやら今日は調子がいいみたいだ。