自分を鼓舞するには、あまりに残酷すぎる現実。


「……ごめん、彩音ちゃん。私、正直じゃなかった」


ごめん。

積年の想いを飲み込んで、私達を繋いでくれて。

憎いはずの恋敵に、朗報を届けてくれて。それも、康介を訪ねてまで。

きっとあなたは、本当に、根っこから優しくて、慈悲深くて、素敵な女の子なんだと思う。

そんなあなたに、私も素直でいなくちゃいけない。


「私も、リョータのことが好き。触れたいとか抱き締めたいとか、キ……キスしたいとか。そういう類の、好き」


想いを本人に打ち明けるとかそんなことまでは考えてないけど……でも私は、リョータの傍にいたいんだ。

ずっとリョータを想い続けてきた彩音ちゃんを差し置いてでも。そんな醜い感情を抱いてしまうほど、リョータは私の中で大きな存在になっていた。


「……あっそ」


私の告白を聞いた彩音ちゃんは、はーっと深い息を吐いて頭をガシガシと掻いた。黒い髪が、無造作に乱れる。