負った傷を、深く抉ってやる。

サッカーが出来ないという現実を、真正面から突きつけてやる。

なんだって言える私達の関係に、甘やかしはいらない。


「たかが怪我で、こんなんになるなんてね。見損なったよ。あんたのサッカーへの想いって、そんなも──」


そんなものだったんだ。言い終わる前に、何かが壁に投げつけられ、大破した。

数瞬の間の後、それがベッドサイドに置かれていた目覚まし時計だということを理解する。

ようやく体を起こしてこちらを見た康介の目には、溢れんばかりの涙。


「お前に何がわかるんだよ……!」


怪我をしたのはお前じゃないのに。お前は、好きなことを奪われてもいないのに。

憎悪を含んだ康介の目が、私を捉えて離さない。


初めて見る、顔だった。

苦しくて悔しくて仕方ない。そんな顔。


何があってもいつも自分ひとりで乗り越えてきたあんたがこんなふうになっちゃうってことは、それだけ苦しかったんだよね。