晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

【俺が登坂さんの走りを初めて見たのは、中学3学生の時でした。

その頃の俺は、目標を失って何をするにも無気力で。だけど、そんな自分を人に見られるのが嫌だったから表向きは明るく振る舞って、そのことがまたストレスになって、なけなしの活力が削がれて……の繰り返し。

毎日が苦痛で仕方なかった。

そんな時に応援に行った中学最後の陸上の大会で、君を見たんだ。


帰りたくて仕方なかった俺の耳に歓声が届いて、目を向けたら、もう一瞬だった。

なんて力強い走りなんだろうって釘付けになった。俺も下ばっかり見てちゃダメだよなって思わされたんだ】


これ……リョータのお母さんが話してくれた内容とほぼ同じだ。

病気が見つかり突然陸上を奪われて、喜怒哀楽のメーターが壊れてしまっていた頃の話。


あの日、あのフィールドに立ててよかったな。あの時あの走りが出来て、よかった。

沢山の偶然が重なって、私はリョータに見つけてもらえた。

神様の正体は大魔王だって未だに思ってるけど、それでも。私にリョータという奇跡をくれたことには、心から感謝したい。