晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

「崚ちゃんのことそんな風に言わないでよ！」


金切り声にも似た悲痛な声色。

痛いのは私のはずなのに、彼女のほうが泣きそうな顔をしていた。


「“崚ちゃん”……？」


口にした名前を私が復唱すると、彼女はハッとした様子で眉根を寄せた。

“崚ちゃん”というのは、恐らく、彼女によるリョータの呼び名だ。

繋がった。彼女は確実に、リョータのことを知っている。


「……サイアク」


忌々しそうに呟いて、彼女はキッと私を睨んだ。

私にアタリをつけられたことを、彼女も気付いたらしい。


「……ついてきて」


不本意そうに、それでもぶっきらぼうにそれだけを言い放ち、彼女はスタスタと昇降口を出て行く。

彼女はローファーを履いていたので、慌てて靴を履き替えてその後を追った。


門の手前ですれ違った後輩に部活には遅れて行くと言付けを頼んで、前を歩く彼女に続いて学校を出た。