晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

彼女は私から視線を逸らし、忌々しそうに唇を噛んでいる。

少しつり上がった大きな目。白い肌と、左目の下の泣きぼくろ。

真っ黒な長い髪は一目で手入れされていることが伝わるほど艶めいていて、彼女の肩からさらりと落ちた。


「あなたが、リョータなの……？」

「はァ！？」


小さな口を大きく開けて、彼女が噛み付く。ちらりと見えた八重歯が、彼女によく似合っていた。


「ち、違うの？」

「違うに決まってんでしょ！？ いい加減離してッ」


力の限り私の手を振り解いた彼女。

しかし私からは逃れられないと観念したのか、逃げ出そうとする様子はなかった。


猫目と泣きぼくろと、長い髪。それらのキーワードが、私の記憶を引っ掻く。

この子、どこかで……？

記憶のピースを掻き集めてみても、過去に彼女の姿は浮かんでこない。


っていうか、今はそれより……。