「…………」


なるほど、そういうことね。

そりゃなんかあったのかと思うよね、あれだけ一緒にいた私達が突然一言も喋らなくなったら。私でも思うと思うわ。


ボトルと一緒に置いていたタオルで口元を拭きながら、適切な言葉を必死に探す。


「喧嘩……なのか、私もよくわかってないんだ」


東の空が群青に染まり始めている。

どうしておほしさまは東からやってくるの。いつだったか、そんな問いを康介に投げたことがあった。

あの時、康介はなんて答えたんだっけ。


「私の大切な存在を、康介に否定されちゃって。康介の言ってることはもしかしたら正しいのかもしれないけど、でも……受け入れられなくて。それから、なんかちょっと気まずいんだ」


ほんとはそれだけじゃないんだけど、そこから先はさすがに言えない。


あの時康介が怒った原因は、リョータだ。

康介はリョータのことを怪しいと言ったけど、色んな可能性を鑑みても、私が知るリョータが虚像だとは思えない。

リョータを信じたい。だけどそれは同時に、康介を傷つけることになってしまうんだ。


「千鶴先輩ってば、ほんとに不器用さんですねぇ」

「え……?」

「正しいとか正しくないとか、そんなのどうでもいいんですよ。大切なのは、自分がどうしたいか」