晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

「そりゃ女子にもモテるわなぁ……」


体操服の裾で顔の汗を拭う康介をぼんやりと眺めながら、口を衝いて出た言葉。

私の台詞を拾った真田が、目を真ん丸にしてこちらを見た。その姿がじわりとぼやける。


「まさか、登坂の口からそんな言葉が出てくるなんて」

「……悪い?」

「悪いなんて言ってないじゃないの。ただ、登坂でもそんな風に思うんだなぁって──」

「──危ない!」


……え?

真田の静かな声を遮るように響いた、悲鳴にも似た甲高い声。

反射的に、捻っていた体を元に戻すと、途端に大きな衝撃が私を襲った。


それから先の記憶は、ない。



ゆらゆらと揺れる意識の中で、私は電車に乗っていた。

普段使っているような、人でごった返した電車ではない。

長い椅子に人の姿はぽつぽつとしかなく、しかしその顔は霞みがかっていて見えなかった。


窓の外に視線をやると外は真っ暗で、電車がトンネルの中を走っていることを知る。