晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

酸素を求めて喘いでみても、苦しさは増すばかりで一向に楽になんてならなくて。


白く霞んでいく意識の中でふと思う。

泳ぐ手を止めたらどれだけ楽だろう、って。




余裕がなくて、リョータへの返信を書かずにいた。……ううん、書かなかったんじゃなくて、書けなかったんだ。

今までも弱さを曝してきたけど、こんなにも脆弱なところまで見せることを心が拒んだ。

尖った自分がリョータに傷をつけない自信もなくて、臆病になって。

心の内をリョータに吐露したら楽になれるんじゃないかっていう自分の考えも嫌いだった。


自分の中で明確な答えを見つけ出してから手紙を書こうと思っていて、だから返事を出さないうちにローファーの上に封筒が乗せられていた時は心底びっくりした。


「なん、で……」


練習後の大荷物が一気に重さを増したような、軽くなったような。

小刻みに震える手を伸ばすと、表面には確かにリョータの字で【登坂千鶴さんへ】と書かれていた。