今日も、ホイッスルの高い音がグランドに響いている。

大会が近いこともあって、部内の雰囲気はより引き締まっているように思う。


「千鶴さん2本目いきまーす!」


トモちゃんがホイッスルを吹いたのを合図に、私は土を蹴り上げた。




「登坂」


練習後、全体のミーティングが終わったのと同時に監督に呼ばれた。

その表情は渋くて、明るい話ではないと瞬時に悟る。


「はい」


言われることも、何となく予想できてしまう。

四肢がブリキの如く鈍くなっているのを感じつつ、眉間に深い皺を刻んでいる監督に歩み寄る。

監督は、周囲に部員がいなくなったタイミングで口火を切った。


「お前、このままで大丈夫か」


監督の口から飛び出した言葉は、予想していたそのままのものだった。

途端に、気道が狭くなったような息苦しさを感じて、ぎゅっと服の裾を掴む。


「タイムが縮まる気配もないじゃないか。お前は全国を狙っていかなきゃならん選手なんだぞ」


ぐさり。