晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

手紙のやりとりを始めた頃、言ってたよね。私の走る姿を見て、元気をもらったって。

それはいつのことなのかなって、ずっと気になってたんだ】


それから、と続けようとして思い留まる。

どんな理由で落ち込んでたかを聞こうとするなんて、我ながらデリカシーない。

触れられたくないことは誰にだってあるはずだ。もちろん私にも、気丈に思えるリョータにも、きっと。


【差し支えなければ教えてください。


それじゃ、またね】


最後に自分の名前を記し、封筒に入れる。

前のを使い切ったから、今回から新しいレターセットに変えたんだ。

薄紅色の、桜を彷彿とさせる綺麗な便箋。お店で一目惚れして買ったもの。


梅雨に差し掛かったら、紫陽花っぽいレターセットを探そうかな。

日本に四季があるからこそ、そういう選び方を出来る。

本を読むようになってから、日本語にはとても綺麗な表現があって、言い回しが多様だってことを知った。


他の国にもいいところは沢山あるんだろうけど、日本に生まれてよかったって最近よく思うんだ。