晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

ぶっきらぼうに言って、彼は歩くスピードを速めた。

悔しいことに、康介のほうがはるかにコンパスが長いので、あっという間に距離が広がってしまう。


「ちょっ……置いてかないでよ!」

「お前が変なこと聞くからだっつの」

「変なことって……真剣に聞いてたんですけど!」


広い背中に噛み付くように抗議の声をぶつけると、彼はゆっくりと振り返った。瞬間、ばちっと視線が絡む。

表情筋が休息したその表情は、怒っているようにも侘しさを含んでいるようにも見える。


「真剣だろうがなんだろうが、そんな意味不明なこと俺に聞くなバカ」


眉間に深い皺を刻んで、口角を頑なに上げようとせず。過去に嫌なことでもあったのか? と問いたくなるような面持ちと声色。

うーん、康介に聞いたのは失敗だったらしい。

真田と衝突した時は真面目に聞いてくれたし、女の子に人気があるという康介なら、私が抱く疑問の答えを知ってると思ったんだけどなぁ……。




帰宅後、食事と入浴を済ませてから、私は自室の机に向かった。手元には、先日、新たな靴箱ポストに届いた一通目の手紙。