晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

康介に聞かされた話に出てきた女の子は、教室に赴き告白してきた子ではなかった。


「いきなり声かけてきて、登坂千鶴って人と付き合ってるんですか、だもんなぁ」


部室に向かう途中、背後から声を掛けられてそう問われたのだという。


「あはは……あんたはなんて返したの」

「なんてって……付き合ってないけど、って言うしかねぇだろ。そしたら、睨みながらでっかい舌打ちされた」

「で、でっかい舌打ち……?」


どういうことだ。

康介のことが好きなら、本人の口から私と付き合ってないって聞けたら嬉しいはず。

それなのに、なんで舌打ち。しかも睨みながら。


「どんな子だったの?」

「どんな子って……」


聞くと、一瞬だったらしい出来事の記憶を手繰り寄せているのか、康介がまだうっすらと明るい空を見上げた。


「ちづよりチビで……」

「例えがおかしい」

「髪は長くて泣きぼくろがあって、ちょっとつり目っていうか猫目っていうか……気の強そうな感じだった」


ふぅん。特徴を聞いても、思い当たる子はいないや。

私の知ってる子じゃなさそうだ。