晴れ渡る空の下で、君のために風となる。

今年度は1年生の担任になっていて、理系に変更した真田の授業も受け持っていないらしい。

何だか残念だと思った私に、これでいいのだと真田は言った。

質問したいときは自分から赴けばいいんだし。多くは語らなかったけど、彼女がそう言うのならそうなんだろう。


現実を受け入れ、壁を乗り越えようとする真田の言葉は、疑いようもないくらい力強く耳に届く。


でも、うん……そうだよね。

私が大切にしなきゃいけないのは、康介のことを好きなどこの誰とも知れない子より、小さい頃から一緒にいた幼なじみのほうだよね。

私は私のまま、これからも仲のいい幼なじみとして康介の傍にいよう。


そう心に決めて、私は最後に残っていた玉子焼きを口いっぱいに頬張った。

後から聞いた話によると、康介は教室を訪ねてきた1年生の告白を、丁重にお断りしたらしい。




開き直って傍にいよう、と決めたけれど、一つだけしてはいけないことがあることもわかっていた。

それは、康介との会話で告白した女の子を話題に挙げることだ。

「告白されてたね」「どうだったの」と、私の立場で野次馬精神全開で聞こうものなら、玉砕した女の子達はきっといい顔をしない。

まして、受け入れなかったことを「どうして」なんて聞いちゃいけない。


そこは私が足を踏み入れていい領分ではないと、ちゃんと弁えているつもりだ。




──だけど、話を振られた場合はどうするのが得策?


「なんか、唐突すぎてビビった」


頤に手を当てて眉間に皺を寄せて隣を歩いているのは、今日もハードな練習をこなした後の康介だ。

彼から聞かされた話に、私も豆鉄砲を食らったような顔になっているに違いない。