「この角度だと、凛のところからはキスしてるように見えると思うよ」
「…!?凛ちゃんいるの!!?」
慌てて白鳥を押しのけようと腕を突っ張ろうとしたが、繋がれた手は痛いくらいに握り締められている。
「ほら、凛のことになると冷静じゃなくなる」
左手は私の手、右手は私の腰に回して完全に逃げ場を塞いだ。
「離してよ、白鳥は私のこと嫌いなの?」
「いや、友達だと思ってるよ」
「じゃあ何で…」
彼は聞き分けの悪い子を慈しむような、優しい目をして顔を寄せた。
「俺は好きな子には笑っていてほしいし、幸せにしたい」
「…え?」
ふわりと合わせた唇が柔らかくて。
それよりも、強く香ったライラックの香りが目眩を引き起こした。
触れるか触れないかの微妙な接触。
でも確かに触れた感覚があった。

