「あ、もしもーし。俺だけど?あの子逃げちゃったよー。快の言うとおりだねー。」 叶汰は茜がでていったドアを見つめながら続けた。 「あの子、かわいいね。俺と、湊でもらってもいいかなー?湊も気にいったっぽいんだよねー。」 しかし、通話相手の男は舌打ちをし、低い声で静かに言った。 「茜に手ぇ出すなよ。」 いつもとは違う声。機嫌が悪いことは安易に伝わる。 「あーい。」 叶汰は適当に返事をし、通話をきった。 「さーて、摑まるのも時間の問題かなー。」 鼻歌を歌いながら、彼は弟のすむ家去った。