君に初恋………ー母の遺した宝物ー

「次はどこ行く?」

腕を絡ませ歩く優瞳と…

対照的に、不機嫌な廉。


あの男…………


あいつ、栗栖 瞬が気になって仕方ない。


あいつはきっと優瞳が好きだ。

だからって渡す気にもならないし、引かない。

ただ、優瞳の気持ちがあいつに向かないか不安が拭えない。


「れっくん、聞いてる?

もう帰る?」

何だか元気のなくなる優瞳。

「なんで…?」

不思議に思い問い掛けると、


「廉くん話聞いてないし、さっきから怒ってる気がして…」

立ち止まる優瞳の瞳が揺らぐ。


動揺の色が、俺の瞳に映る。


「違うよ!!

ごめんな。あいつと仲良さそうだったからつい…」


優瞳の瞳が揺れ、泣きそうな表情で俺を見る。


初めてのデートなのに、不安にさせて泣かせた。


「優瞳…


泣くなよ…


ごめんな。」


髪の毛をとくように絡ませる。


「私の方こそ、ごめんなさい。私には、廉くんしか見えないよ」


何それ……


瞳を、潤ませ首を傾げ袖を、掴むこの表情……


無自覚は、たちが悪い。


気づいてるだろうか、可愛い仕草をしてると。

「はああ、もう…なんなの、この小動物…」


ため息しか、出ない。

きっと一生…………ー


君には叶わないであろう。