「結希子、あの子は16歳になったよ。


見せてあげたかった、優瞳の制服姿を。

笑って送り出して欲しい。


君が守ったあの子を……」

守った………?


仏壇に手を合わせて呟く声が、”守った“と言う言葉がやけに響く。


「それ…どう言う意味?お父さん」


私の声に一瞬焦った様な顔をしたお父さんは、苦笑い。


「いたのか、さぁご飯だご飯だ!」


いつも、そうだ。


私は、お母さんが死んだ時の事は何一つ記憶がない。


なんで死んだか。


事故だ、しか言わない。


なんの事故かも教えてくれない。


私は、何一つ…何も聞かされてなくここまで育った。


隠してる…?

何かを隠してる…?

でも、一体何を。


仏壇の前に行くと白いご飯がお茶碗に盛られ写真立ての前に置かれてる。


「お母さん…今日から高校生だよ。


私、頑張るからお空から見ててね!」


にこり、と笑った私の目に映るのは…

写真立てに映る母の写真。


それを見送り部屋を出る。