バラードの終わり。最後の余韻を残したギターの音が消える前に、珪甫のドラムが高速のリズムを叩き出してオーディエンスに襲いかかった。


マイクスタンドを後方へ置き、マイクだけを握った海斗はスピーカーに片足を掛け叫んだ。


さっきのバラードから打って変わってアップテンポの曲に、一瞬戸惑いを見せたオーディエンス。だけど、ノリやすい曲をチョイスした紅志の目論見は大正解!


すぐに彼女たちは体を揺らし、手を上げて盛り上がりを見せる。


よっしゃ!


心の中でガッツポーズを決めた私。


一瞬振り返って珪甫を見れば、ちょうど目が合った。


同じ気持ちだったのか、珪甫もニッと唇を上げていた。


「ほらほら!もっと前まで来いよ!」


海斗が間奏の時に爽やかスマイルでオーディエンスを煽れば、頬を紅潮させた女の子たちが少しずつ前へ前へと集まってくる。


やっぱりあの天使の笑顔には負けるわぁ~。
なんて思う私の前あたりにも、女の子たちはいるんだけど。


ま、やっぱり海斗しか見てねぇし!


誰か私も見にきてよ~~!


少し悲しくなった私だった。