くそう。これが身長というリーチの差なのか……。
余裕な顔であたしの行動を楽しんでる星野くんに憤りを感じて、今度は帽子を奪う振りをして、彼のかけているメガネを奪った。
「あっ、こら返せ!」
「珍しいじゃん。普段はメガネしてないのに。これ、ダテ……じゃないんだね」
メガネをかけてみると視界がボヤけた。思ったより度が入ってるみたい。
大きな黒縁メガネはあたしの顔には大きいみたいで、ズルリとズレて落ちそうになった。
慌てて顔から外すと、目をすぼめてこちらを見てる、いつもよく見る星野くんがいた。
「普段はコンタクトにしてんだよ。だから今日はそれないとなんも見えねーから、返して」
「その帽子と交換といこうじゃない」
「わかった」
あっさりと引き渡された帽子。
ちょっと拍子抜けな感じはするけど、あたしも素直にメガネを返した。
受け取ったメガネを装着して、再びあたしと向き合った星野くんは、ほっとした笑顔を向けた。
「良かった。これが無いとせっかく可愛いカッコしてる浮田の事、ちゃんと見えないからな」
あたしが、えっ? って思ったと同時に、彼はすぐさま言葉を繋いだ。
「まぁメガネ無くても、こんな街中で子豚を探すくらいなら出来るけど」
「うっさいな。メガネ割るぞ」
いつもの憎らしげな笑顔で星野くんは映画館の中に足を踏み入れた。
そんな後ろ姿に呪いをかけるみたいな表情で、あたしは後を追った。
……ちょっとドキッとしちゃった事が、なにより悔しい。
そう思いながら。



