「そんなの起こせば良かったのに」
「声かけたけど、星野くんぐっすり寝てたから」
とは言っても、あたしも本気で起こしにはかからなかったのも原因だ。
揺さぶりをかけたり、もっと大きな声で呼びかけていれば起こす事は出来たと思う。
でもそれをしなかったのは、すでに自分の駅は通り過ぎてしまったからという理由と、邪念のせい。
だからこの事については強く反論しようとは思わない。
それについて訝しむ星野くんは窓の外の景色を見て「次で降りるぞ」と立ち上がった。
ちょうど電車がホームへと滑り込んだ瞬間だった。
ガタガタと揺れながら徐々に速度を落とし、やがてピタリと止まる。
「浮田 真依子は意外と気を遣うヤツなんだな」
「意外は余計でしょ。ってか、なんでそんな話になってんの?」
「だって気遣ったろ? 起こしちゃ悪いと思って俺を起こさなかったんだろ?」
……まぁ、間違ってはないかな?
それが全てではないけども。
ホームへ降り立つと、星野くんは改札へと向かう階段を降りていく。
少し進んだところで振り返り、早く来いと言わんばかりにあたしを見てる。
「あっ、10分後か」
そう言って時刻表から視線を外し、反対側のホームへと向かう星野くん。



