あっ次、あたしの降りる駅だ。
車内アナウンスが流れて、どことなく電車もラストスパートをかけているように感じる。
ガタン、ゴトン、という音がさっきよりも早く、うるさい気がするから。
だけど、そんな喧騒も星野くんの周りには無いように感じる。
だって彼は動じる様子もなく、相変わらず一定の呼吸音を零し、眠っているから。
閉じられた瞼はどんな岩よりも強固なものに見えるくらい、開きそうにない。
「星野くん、あの〜……」
スースー、という気持ち良さそうな寝息を聞いていると、起こすことは悪な様に思えて、それ以上声をかけられずにいる。
本当に、寝てるんだ。
初めは冗談かと思ったけど、これはきっと寝たふりなんかじゃない。
あの星野くんが、こんな状況でこんなナチュラルに眠れる訳がない。
そうこうしている間に、電車はゆっくり速度を落とし、停車した。
それと同時に、あたしの中の何かも、ゆっくりと速度を落とし、そこに留まった。



