「あれっ、珍しい」
玄関で靴を履き替えている時、背後で驚いた声をあげたのは、古柳くんだった。
「浮田さんがこんな時間まで学校いるの珍しいね」
「今日は部活に出てたからねー。なんせブタだから痩せなきゃいけないし」
じろり、と古柳くんを睨む様に見つめた。
もちろん冗談でだけど。
「あははっ、浮田さんは太ってないって。あれは冗談だって」
「いいの、あたしは昨日現実を見たの」
古柳くんは黒い髪をサラリと揺らしながら首を傾げた。
「現実? どういう事?」
「久々に体重計乗ったら、増えてた。現実は厳しかったのよ」
しょんぼりするあたしに対し、古柳くんは爆笑してる。
こらこら、ここは慰めるところじゃないの?
あたしは笑いなんかより、フォローの言葉を待ってるんだけど。
「じゃっ、あたしは帰るよ。さようなら嫌味な笑いをする古柳くん」
「あははっ、ごめんごめん。でも世の男とは細身女子より少しぽっちゃりしてる女子の方が好きな訳だし、いいんじゃない?」
「世の男なんてどーでもいいのよ。あたしがあたし自身を好きになれるかどうかの瀬戸際なんだから」
「それはなかなか厳しい境地に立ってんだね」
そう、乙女はいつでも厳しい境地で戦ってるんだよ。



