「星野くんって彼女いたっけ?」

「なんだよ突然」

「いや、なんとなく。……で、いるの?」


あたしはグイグイ聞き続ける。

一応確認しとかないとね。だって彼女がいたならこれはあたしの勘違いだから。


星野くんは目線を逸らしながら首の後ろを掻いた。


「いやー……いないけど」


ほらやっぱり。

きっとそうだと思ってたけどね。


「そうなんだ? ふーん」

「なんだよ」

「ううん、ただ聞いただけだし」

「なんだよそれ」


言いながら星野くんはハニカミながらちょっとばかり笑った。


「そういう浮田は彼氏いないんだっけ」


聞いてるのか決めつけてるのかどっちよ。


「いや、いるし」

「えっ!? マジ?」

「なんでいないと思ったの?」

「だって、浮田が男と歩いてるのを見た事ないし」

「そんな事ないし。あたし男友達だって少ないけどいるし」

「でもそれって友達だろ?」

「うん」

「彼氏は他校のやつ?」


今度は星野くんがグイグイ来て、私が押されてる。


「別に誰だっていいでしょ?」

「なんだよ、俺言ったじゃん」

「星野くんは彼女いないって言った。でもあたしは彼氏いるって言った。情報量はフェアだよね?」

「ここまで言ったら教えろよ。気になるじゃん」

「何でそんなに気になるの?」

「そりゃ〜……」


星野くんは口をモゴモゴさせながらフィッとあたしから目を逸らした。

まるで明後日でも見るように。


「気に、なるだろ……浮田と付き合うような変わった趣味してるヤツ、そうそういないだろうからな」


なんて失礼な男だ、星野くんは。

回りくどい事をするとこっちが傷つけられかねない。そう思って、あたしはきっぱりとした口調でこう言った。