「なにムキになってんだよ。ほら貸してみろって。せっかくのホットが冷めるぞ」
背後から伸びてくる腕に一瞬どきりとしてしまった。
思ったよりも距離を詰められて、なんだったら星野くんの吐く吐息が届きそう。
寒々しい空気の中で、そんな空気を柔らかな綿菓子みたいに白く染めていく、星野くんの吐息。
そんなものに気を取られてしまったせいだと思う。
あたしはやすやすと星野くんにコーンポタージュを取られてしまった。
ーーカシュッ、なんて音を立てた後、開いたプルタブの口から星野くんの吐息と同じ、柔らかい湯気が立ち上り、そこから甘い香りがあたしの鼻先をくすぐった。
「ほらよっ」
星野くんから受け取ったコーンポタージュ。
その時、少しだけ指先が触れた。
触れた指先がピクリと弾んだのをあたしは見逃さなかった。
だけどあたしは何も気づいてない素ぶりで、まだ温かな缶をしっかりと握りしめる。



